電子の動きと化学結合の基本

周期表から学ぶ化学の基礎
No.776
化学

日付:2025年4月9日

原子は安定を求めて結びつく。イオン結合・共有結合・金属結合、それぞれのしくみと物質の性質との関係をわかりやすく整理。

目 次

はじめに

前回の記事では、原子の構造と電子配置について学びました。
今回は、電子の動きがどのようにして原子同士を結びつけるのか、つまり「化学結合」の基本について解説します。
物質の性質や反応は、この原子間の結びつき方によって決まります。

なぜ原子は結びつくのか?

原子は、安定な電子配置(特に最外殻が満たされた状態)を目指して結びつこうとします。
これを達成する手段として、電子を「譲る」「受け取る」「共有する」という 3 つの方法があります。

このとき生じる結合には主に以下の 3 種類があります:

1. イオン結合(ionic bond)

  • 電子を完全にやりとりする結合
  • 一方の原子が電子を失って陽イオンに、もう一方が電子を受け取って陰イオンになる
  • 正負の電荷による静電的な引力で結びつく

例:

  • ナトリウム(Na)は価電子 1 つを失って Na⁺ に
  • 塩素(Cl)は電子 1 つを受け取って Cl⁻ に
    → Na⁺ と Cl⁻ が引き合い、塩化ナトリウム(NaCl)を形成

性質:硬くてもろい、高い融点、水に溶けやすく電気を通す

2. 共有結合(covalent bond)

  • 電子を共有することで結びつく結合
  • 2 つの原子が互いの価電子を出し合い、共有電子対を作る

例:

  • 水素(H)は電子 1 つを共有し、H₂ 分子を形成
  • 水(H₂O)は酸素(O)と水素(H)が共有結合でつながる

性質:分子の形状に多様性があり、液体や気体の形態も多い

3. 金属結合(metallic bond)

  • 金属原子同士が電子を共有し合う特殊な結合
  • 原子核と価電子の間に自由電子が生じ、「電子の海」に原子が浮かぶような構造

例:

  • 銅(Cu)や鉄(Fe)などの金属元素

性質:電気・熱をよく通す、展性や延性がある、光沢がある

結合の違いを比較

結合の種類電子のやりとり主な対象代表例
イオン結合完全な授受(移動)金属 + 非金属NaCl(塩化ナトリウム)
共有結合電子の共有非金属 + 非金属H₂O(水)
金属結合自由電子による結合金属 + 金属銅、鉄、アルミニウム

まとめ

  • 原子は安定な電子配置を目指して結合する
  • 化学結合にはイオン結合・共有結合・金属結合の 3 種類がある
  • 電子の動き方により、結合の種類と物質の性質が決まる

次回は、化学結合によってできた物質の分類と、身近な化合物の性質について詳しく見ていきます。