「ナッシュ均衡」について

ゲーム理論の基礎

日付:2025年3月12日

ナッシュ均衡(Nash Equilibrium)とは、ゲーム理論における基本的な概念の一つで、「どのプレイヤーも、自分の戦略を一方的に変更しても得をしない状態」のことを指します。

目 次

1. ナッシュ均衡の定義

ナッシュ均衡(Nash Equilibrium)とは、ゲーム理論における基本的な概念の一つで、「どのプレイヤーも、自分の戦略を一方的に変更しても得をしない状態」のことを指します。

具体的には、プレイヤーがそれぞれ最適な戦略を選択しているため、誰か一人だけが戦略を変更しても自分の利益を増やすことができない状況です。

2. ナッシュ均衡の数学的表現

ナッシュ均衡は、数式を使うと次のように表現できます。

あるゲームにおいて、プレイヤーを ii 、戦略の集合を SiS_i 、各プレイヤーの報酬関数(利得関数)を uiu_i としたとき、

ui(si,si)ui(si,si)siSiu_i(s_i^*, s_{-i}^*) \geq u_i(s_i, s_{-i}^*) \quad \forall s_i \in S_i

ここで、

  • sis_i^* はプレイヤー ii のナッシュ均衡における戦略
  • sis_{-i}^* は他のプレイヤーのナッシュ均衡における戦略の組み合わせ
  • uiu_i はプレイヤー ii の報酬関数(利得)

この条件が満たされるとき、(s1,s2,...,sn)(s_1^*, s_2^*, ..., s_n^*) はナッシュ均衡となります。

3. 囚人のジレンマとナッシュ均衡

ナッシュ均衡の代表的な例として「囚人のジレンマ」があります。

状況の説明:

  • 2 人の容疑者 A と B がいて、それぞれ自白する(裏切る)か黙秘する(協力する)かを選べる。
  • もし両者が黙秘すれば軽い刑(-1 年)が課される。
  • 片方が自白し、もう片方が黙秘すると、自白した側は釈放、黙秘した側は重い刑(-5 年)を受ける。
  • 両者が自白すると、中程度の刑(-3 年)が課される。
B が黙秘B が自白
A が黙秘(-1, -1)(-5, 0)
A が自白(0, -5)(-3, -3)

このとき、

  • A は「B が黙秘するとしても自白した方が得」
  • B も「A が黙秘するとしても自白した方が得」

したがって、両者とも自白を選び、結果的に (-3, -3) がナッシュ均衡になります。

4. ナッシュ均衡の応用

ナッシュ均衡は、経済学やビジネスのさまざまな場面で応用されています。

  • 価格競争
    (クールノー競争、ベルトラン競争)
  • 企業の戦略的意思決定
    (広告、投資、参入・撤退戦略)
  • ポーカーやオークション
    (最適な入札戦略)
  • AI・機械学習
    (ゲーム理論を活用した最適戦略の決定)

5. まとめ

ナッシュ均衡とは、どのプレイヤーも一方的に戦略を変更しても利益を増やせない安定した状態です。
「囚人のジレンマ」のようなシンプルな例から、企業戦略や AI の意思決定まで幅広く活用されています。

次回は「囚人のジレンマと協力の戦略」について詳しく解説します。