選別と支援の境界線

利益と誠実さのバランス

日付:2025年3月27日

「将来性のある人だけを支援する」という方針は合理的である一方で、不誠実さをはらんでいます。選別と支援、その境界線について考察します。

目 次

はじめに

「この人には伸び代がある」「この子は結果が出る」

そんな直感や過去の実績をもとに、誰を優先的に支援するかを決めることは、教育業界に限らず、コンサル・投資・医療など、さまざまな分野で行われています。

しかしその選別には、しばしば「誠実さ」とのズレが生じます。

正当な選別か、不誠実な切り捨てか?

選別はビジネスとして当然です。
全員を同じように扱うことは、時として全体の質を下げてしまう。
だからこそ、資源を集中させる判断は必要です。

しかし、それが「他の人には期待していない」「可能性はないと判断した」といったメッセージとして伝わってしまった場合、受け手の自己肯定感を大きく傷つけてしまいます。

「あなたは見込みがないので対象外です」という態度が、もしも表に出てしまったら、それは支援ではなく“排除”です。

期待をかけることの意味

期待にはコストがかかります。
時間、手間、感情、リスク——それでも誰かに「期待する」という行為そのものが、最大の支援になることもあります。

「期待されることで頑張れる」
「信じてもらえたことがきっかけになった」

こうした言葉が意味するのは、選別とは逆のベクトル——「見放さないこと」による支援です。

選別と支援、その間にあるのは、相手の人生への“関与の意志”と言えるかもしれません。

現実とのバランスをどうとるか?

すべての人に無限のリソースを割くことはできません。
ではどうすればいいか?

  • 「全力で支援はできないが、選択肢や道筋は提示する」
  • 「可能性を狭めるような言葉は避ける」
  • 「現実的な撤退ラインと、その後の選択肢を一緒に考える」

こういった関わり方が、「不誠実ではないが、過剰な責任も取らない」支援の形ではないでしょうか。

支援とは「選ぶ」ことではなく「向き合う」こと

最終的に、支援とは“対象者を選ぶこと”ではなく、“その人とどう向き合うか”に尽きると思います。

表面上は同じことをしていても、「この人には無理だと思っている」か「何か一つでも可能性を見出したい」と思っているかで、関わり方はまったく変わります。

ビジネスとしての制限がある中でも、関わる一人ひとりに「誠実に向き合う」姿勢こそが、長い目で見て信頼と成果を生むのではないでしょうか。

次回予告

次回は「誠実さを守るための価格戦略」と題し、利益と誠実さのバランスを保つための実践的な設計について掘り下げていきます。

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