ポートフォリオ最適化の数学的基礎

ポートフォリオ最適化の数学理論

日付:2025年3月12日

投資や資産運用では、リスクを抑えつつリターンを最大化することが重要です。そのために活用されるのが「ポートフォリオ最適化」です。

目 次

1. はじめに

投資や資産運用では、リスクを抑えつつリターンを最大化することが重要です。
そのために活用されるのが「ポートフォリオ最適化」です。
この最適化を数学的に理解し、効率的なポートフォリオを構築するために必要な基礎概念を解説します。

2. ポートフォリオ最適化とは?

ポートフォリオ最適化とは、異なる資産を組み合わせて、全体のリスクを最小限に抑えつつ、期待リターンを最大化することを目的とする手法です。

(1) 期待リターンとリスクの定義

  • 期待リターン(Expected Return):資産が将来どれだけの利益を生むかの予測値。
  • リスク(Risk):リターンの変動の大きさ(標準偏差)として測定。

具体的に、ポートフォリオのリターン RpR_p は各資産のリターン RiR_i の加重平均で表されます。

Rp=w1R1+w2R2+...+wnRn=i=1nwiRiR_p = w_1 R_1 + w_2 R_2 + ... + w_n R_n = \sum_{i=1}^{n} w_i R_i

ここで:

  • wiw_i : 資産 ii のポートフォリオ内の比率
  • RiR_i : 資産 ii のリターン

(2) リスク(標準偏差)の計算

ポートフォリオのリスク(標準偏差)は、個々の資産のリスク(分散)と、資産間の関係(共分散)を考慮して計算 されます。

σp2=ijwiwjσi,j\sigma_p^2 = \sum_{i} \sum_{j} w_i w_j \sigma_{i,j}

ここで:

  • σp2\sigma_p^2 :ポートフォリオ全体の分散(リスクの指標)
  • σi,j\sigma_{i,j} : 資産 iijj の共分散
  • wi,wjw_i, w_j :各資産の投資比率

この式は、「シグマが 2 つ並ぶ」形になっており、全ての資産ペアについての共分散を考慮して合計を取っていることを示しています。

3. 数学的な視点からのポートフォリオ

(1) 分散投資の数学的効果

リスクを低減するには、相関の低い資産を組み合わせることが重要です。
相関が低い資産ほど、価格変動が異なる方向に動くため、全体のリスクが抑えられます。

相関係数 ρi,j\rho_{i,j} を用いると、共分散は次のように表されます。

σi,j=ρi,jσiσj\sigma_{i,j} = \rho_{i,j} \sigma_i \sigma_j
  • ρi,j=1\rho_{i,j} = 1(完全相関)
    → 両資産は同じ動きをする → 分散効果なし
  • ρi,j=0\rho_{i,j} = 0(無相関)
    → 両資産の動きに関連性がない
  • ρi,j<0\rho_{i,j} < 0(負の相関)
    → 片方が上がるともう片方が下がる → リスク低減効果大

4. ポートフォリオ最適化の目的

ポートフォリオ最適化の目標は、「リスクを最小限に抑えつつ、期待リターンを最大化する」 ことです。
これを数学的に表すと、次の 2 つの手法があります。

(1) 平均分散アプローチ(Mean-Variance Optimization)

ハリー・マーコウィッツが提唱した「モダン・ポートフォリオ理論(MPT)」では、次の最適化問題を解きます。

minσp2=ijwiwjσi,j\min \sigma_p^2 = \sum_{i} \sum_{j} w_i w_j \sigma_{i,j}

制約条件:

iwi=1\sum_{i} w_i = 1
  • 目的関数:ポートフォリオのリスク(分散)を最小化
  • 制約条件:全ての資産の合計比率は 1(100%)

(2) 効率的フロンティア(Efficient Frontier)

最適ポートフォリオの集合を描くと、「効率的フロンティア」と呼ばれる曲線が得られます。
この曲線上のポートフォリオは、同じリスクなら最も高いリターンを提供するものになります。

Python を使ってこの効率的フロンティアを描くこともできますが、これは後の回で詳しく説明します。

5. まとめ

  • ポートフォリオ最適化は、リスクを抑えながらリターンを最大化する手法
  • 期待リターンは資産ごとの加重平均で表される
  • リスクは資産間の共分散を考慮して計算される
  • 相関係数を考慮した分散投資により、リスクを低減できる
  • マーコウィッツの「平均分散アプローチ」を用いると、最適ポートフォリオを数学的に求められる
シリーズ一覧ポートフォリオ最適化の数学理論
6