はじめに
前回は、微積分の基本定理を学びました。
今回は、特に重要な関数である指数関数と対数関数の微分と積分を学びます。
これらの関数は、物理・経済・金融工学・データサイエンスなど、さまざまな分野で使われます。
例えば、指数関数は複利計算や人口増加のモデルに、対数関数は情報理論やリスク管理の指標に使われます。微積分を理解することで、これらの関数の振る舞いをより深く理解できるようになります。
1. 指数関数の微積分
指数関数とは?
指数関数とは、次のような形の関数です:
f(x)=ax
ここで、a は正の定数(特に e を使うことが多い)です。
指数関数の微分
指数関数の微分は、底(a)の値によって変わります。
- 一般的な指数関数 f(x)=ax の微分公式:
dxdax=axlna
例えば、f(x)=2x の場合:
dxd2x=2xln2
- 特に重要な指数関数 ex の場合:
dxdex=ex
これは、指数関数の中でも最も特徴的な性質で、「自分自身を微分すると自分になる」関数です。
指数関数の積分
指数関数の積分も同様に求められます。
- 一般的な指数関数 f(x)=ax の積分公式:
∫axdx=lnaax+C
例えば、∫2xdx は:
ln22x+C
- 特に重要な指数関数 ex の場合:
∫exdx=ex+C
2. 対数関数の微積分
対数関数とは?
対数関数は、指数関数の逆関数です。
つまり、次の関係が成り立ちます。
y=logax⇔ay=x
特に、自然対数(底が e の場合)を考えることが多く、そのときは lnx と表します。
対数関数の微分
- 一般的な対数関数 f(x)=logax の微分公式:
dxdlogax=xlna1
例えば、log2x の微分は:
xln21
- 特に重要な自然対数 lnx の場合:
dxdlnx=x1
これは非常に便利な公式で、後で経済学や金融工学の応用で出てきます。
対数関数の積分
- 自然対数の積分
∫lnxdx=xlnx−x+C
これは証明が少し複雑ですが、知っておくと便利です。
- 一般的な対数関数の積分は複雑なので、主に自然対数を使うことが多い
3. 具体例と応用
例 1:金融工学での応用(複利計算)
お金の成長をモデル化するために、指数関数を使います。
たとえば、年利r の複利で資産が増える場合、時間 t における資産 A(t) は次の式で表せます。
A(t)=A0ert
ここで、A0 は初期資産、r は金利、t は時間です。
この関数の微分を取ると:
dtdA(t)=rA0ert=rA(t)
となり、「資産の増加率は現在の資産に比例する」という複利の性質が数学的に示されます。
例 2:データサイエンスでの応用(ロジスティック回帰)
データサイエンスでは、ロジスティック関数(シグモイド関数)
S(x)=1+e−x1
がよく使われます。この関数の微分は:
dxdS(x)=S(x)(1−S(x))
となり、機械学習の分類モデルで重要な役割を果たします。
まとめ
- 指数関数の微分・積分の公式を理解することは、金融工学・データサイエンスの応用に直結する。
- 特に ex と lnx は計算が簡単で、重要な役割を持つ。
- 指数関数は成長や減衰を表すモデルに使われ、対数関数はスケール変換やリスク評価に使われる。
次回は、三角関数の微積分について学びます。
波の動きや周期的な現象を扱うために重要な内容です。