pn 接合と整流作用

しくみから学ぶ半導体の世界
No.812
工学

日付:2025年4月10日

p 型と n 型をくっつけると「電流が一方向だけに流れる」? pn 接合と空乏層のしくみをわかりやすく解説します。

目 次

はじめに

前回は、n 型・p 型半導体とそれを生み出すドーピングのしくみを学びました。
今回は、それらを接合(くっつける) すると何が起きるのか、そして 「電流を一方向に流す」 という半導体ならではの機能に迫ります。

pn 接合とは?

n 型半導体と p 型半導体を接合すると、pn 接合(junction) と呼ばれる構造になります。

この接合部分では、n 型の自由電子と p 型の正孔が互いに引き寄せ合い、拡散が起こります。

結果として:

  • n 型 → 電子が出ていく → 正電荷が残る
  • p 型 → 正孔が出ていく → 負電荷が残る

このようにして、接合部に電界(内蔵電界)が生まれ、拡散が止まるのです。

空乏層の形成

電荷が偏った領域では、キャリアが存在しない“空っぽの領域”ができます。
これを
空乏層(depletion layer)
と呼びます。

  • 空乏層は電流の流れを一時的にブロックするバリアの役目
  • しかし、このバリアは外部から電圧をかけることで操作できる

電圧をかけるとどうなる?(順方向バイアス)

  • n 型にマイナス、p 型にプラス → 順方向バイアス
  • 空乏層が狭くなり、キャリアが注入されて電流が流れる

つまり、電流が流れるようになる

逆方向バイアスでは?

  • n 型にプラス、p 型にマイナス → 逆方向バイアス
  • 空乏層が広がり、電流がほとんど流れなくなる

このように、pn 接合は電流を一方向にだけ流す「整流作用」 を持ちます。
これがダイオードの基本的な動作です。

電流-電圧特性(I-V 特性)

pn 接合ダイオードの典型的な I-V カーブは:

  • 順方向 → 一定電圧(例:シリコンで 0.6〜0.7 V)を超えると急激に電流が増加
  • 逆方向 → ごくわずかしか電流が流れない(漏れ電流)

この非対称性が整流のカギです。

図で理解する:pn 接合のイメージ

(n 型・p 型の接合、空乏層の形成、電圧による変化など)

Image
  • 接合部に空乏層ができる
  • 順方向ではバリアが低くなり電流が流れる
  • 逆方向ではバリアが高まり電流は止まる

まとめ

  • pn 接合では、電子と正孔の拡散 → 空乏層 → 内蔵電界が生じる
  • 空乏層がバリアとなり、自然状態では電流は流れにくい
  • 順方向に電圧をかけると電流が流れる(整流)
  • 逆方向では電流が遮断される
  • この「一方向だけ電流が流れる」性質がダイオードの基本!

次回は、この pn 接合を利用した「ダイオード」 の動作や応用例(整流回路や LED)について、より詳しく見ていきます。