金属の性質とイオン化傾向

周期表から学ぶ化学の基礎
No.792
化学

日付:2025年4月10日

電池と電気分解、どちらも酸化還元反応が関係する。電子の流れ・電極の役割・自発性の違いなど、電気化学の基本を図とともにやさしく解説します。

目 次

はじめに

金属は私たちの生活に欠かせない素材ですが、「さびる」「酸と反応する」など、他の物質との反応性にも特徴があります。
その反応のしやすさを表す指標がイオン化傾向です。
今回は、金属の性質を整理しながら、イオン化傾向とその応用について解説します。

金属の一般的な性質

特徴内容
光沢表面が光を反射して輝く
展性・延性たたくと広がる・引っ張ると伸びる
電気・熱伝導性自由電子によって電気や熱をよく伝える
還元性電子を放出しやすく、陽イオンになりやすい

金属は、陽イオンになりやすい=電子を失いやすい=酸化されやすいという特徴をもちます。

イオン化傾向とは?

イオン化傾向(activity series) とは、金属が電子を放出して陽イオン(Mⁿ⁺)になりやすい順を示したものです。

以下のような順番で並びます(一部抜粋):

K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Ag>Au\text{K} > \text{Ca} > \text{Na} > \text{Mg} > \text{Al} > \text{Zn} > \text{Fe} > \text{Ni} > \text{Sn} > \text{Pb} > \text{H} > \text{Cu} > \text{Ag} > \text{Au}
  • 左に行くほど反応性が高く、酸に溶けやすい
  • 右に行くほど安定で、さびにくい・変化しにくい

代表的な反応例

酸との反応

Zn+H2SO4ZnSO4+H2\text{Zn} + \text{H}_2\text{SO}_4 \rightarrow \text{ZnSO}_4 + \text{H}_2

  • 亜鉛が酸に溶け、水素を発生(Zn が酸化、H⁺ が還元)

金属同士の置換反応

Fe+CuSO4FeSO4+Cu\text{Fe} + \text{CuSO}_4 \rightarrow \text{FeSO}_4 + \text{Cu}

  • Fe の方がイオン化傾向が高いため、Cu を追い出して反応

イオン化傾向の応用

分野応用例
防食亜鉛メッキ(Zn で鉄をコーティング)
電池Zn-Cu 電池やリチウム電池の材料選定に関与
化学実験置換反応の予測や酸化還元反応の設計
工業的製錬還元剤の選択により、金属を効率的に取り出す

まとめ

  • 金属は電子を失って陽イオンになりやすく、反応性に差がある
  • イオン化傾向は金属の反応のしやすさを示す指標
  • 酸との反応や置換反応などで、実際にその差が現れる
  • イオン化傾向は防食・電池・金属製錬などさまざまな応用がある

次回は、非金属元素の性質と周期表との関係について解説していきます。