化学結合と物質の状態

周期表から学ぶ化学の基礎
No.783
化学

日付:2025年4月9日

固体・液体・気体の違いは、粒子間の結合の強さと運動の自由度によって決まる。物質の状態とその変化を、化学結合の観点からやさしく解説します。

目 次

はじめに

日常生活の中で私たちは「固体・液体・気体」という 3 つの物質の状態(相)を目にしていますが、これらの状態はどのように決まるのでしょうか?
その答えは、原子・分子間の「結合の強さ」と「粒子の運動」にあります。
今回は、物質の状態の違いとそれに関わる化学的要因について解説します。

物質の三態:固体・液体・気体

物質の状態は、主に温度と圧力によって変化しますが、その根底には 粒子間の力(分子間力) があります。

状態粒子の並び運動性体積と形結合の特徴
固体規則正しく密に並ぶ振動のみ一定の形と体積結合が強く粒子が動けない
液体密にあるが不規則移動可能一定の体積、形は容器による結合があるが自由度が高い
気体互いに離れて分布自由に飛び回る体積も形も容器に従う結合はほぼない、運動エネルギー優位

結合の種類と状態の関係

物質の状態を左右するのは、粒子間に働く力の強さです。
これには主に以下の種類があります:

1. 共有結合(原子間)

  • 非金属原子同士の結合
  • 強い結合 → 高融点、高沸点(例:ダイヤモンド、SiO₂)

2. 金属結合

  • 自由電子によって結びつく
  • 熱・電気を通しやすい、展性・延性がある

3. イオン結合

  • 陽イオンと陰イオンの静電的引力
  • 硬く、融点が高い(例:NaCl)

4. 分子間力(ファンデルワールス力、水素結合)

  • 比較的弱い力だが、液体や気体の状態を左右
  • 水素結合は比較的強く、水が液体で存在する理由の一つ

状態変化とエネルギー

状態の変化(融解・蒸発・凝固・昇華など)は、粒子間の結合を壊したり再形成したりするエネルギーの出入りによって起こります。

例:

  • 氷(固体)→ 水(液体)では、分子がより自由に動けるようになる(熱エネルギーが必要)
  • 水 → 水蒸気(気体)では、分子間力を完全に打ち破る必要がある

状態と結合から物質の性質を読み解く

  • 水が常温で液体なのは、水素結合による強い分子間力のため
  • メタン(CH₄)は分子間力が弱く、常温で気体
  • ナトリウム塩(NaCl)はイオン結合が強く、常温では固体

このように、物質の結合の種類とその強さを理解することで、物質の状態や性質が説明できるのです。

まとめ

  • 固体・液体・気体の違いは、粒子の配列・運動・結合の強さで決まる
  • 結合の種類(共有結合・金属結合・イオン結合・分子間力)が状態に影響
  • 状態変化にはエネルギーの出入りが伴い、それに応じて物質の性質も変化する