希ガスの安定性と化学的特徴

周期表から学ぶ化学の基礎
No.779
化学

日付:2025年4月9日

目 次

はじめに

周期表の一番右、18 族に並ぶ元素群――それが「希ガス(noble gases)」です。
ヘリウムやネオン、アルゴンといったこれらの元素は、きわめて安定していて反応性がほとんどありません。
今回は、希ガスがなぜそれほど安定なのか、その理由と化学的な意味を解説します。

希ガスとは何か?

**希ガス(noble gases)**とは、周期表の 18 族に属する元素で、以下のようなものがあります:

  • ヘリウム(He)
  • ネオン(Ne)
  • アルゴン(Ar)
  • クリプトン(Kr)
  • キセノン(Xe)
  • ラドン(Rn)

これらはすべて常温常圧で単原子の気体として存在し、化学反応をほとんど起こしません。

なぜ安定なのか?

安定性の理由は、電子配置にあります。

  • ヘリウムは電子配置:1s²(K 殻が満たされている)
  • ネオン以降は、最外殻に 8 個の電子をもつ(オクテット則)

この「最外殻電子が満たされた状態」は非常に安定であり、他の原子と結合して新たな電子配置を得る必要がないのです。

オクテット則とは?

**オクテット則(octet rule)**とは、多くの原子が反応によって最外殻に 8 個の電子を持つ状態を目指すという法則です。

  • ナトリウム(Na):電子を 1 個失って Ne と同じ電子配置(2,8)になる
  • 塩素(Cl):電子を 1 個得て Ar と同じ電子配置(2,8,8)になる

このように、多くの化学反応は「希ガスのような電子配置」への到達を目的としています。

希ガスは本当に反応しない?

かつては「希ガスは完全に不活性」と考えられていましたが、現在では一部の希ガス(特にキセノンやラドン)は、強力な酸化剤との反応で化合物を形成することがあると知られています。

例:

  • XeF₂(キセノンジフルオリド)
  • XeO₃(キセノントリオキシド)

ただし、反応条件は極めて限定的で、常温常圧ではやはりほとんど反応しないと考えて差し支えありません。

身近な利用例

希ガスは反応しにくいことを活かして、さまざまな場面で利用されています。

  • ネオン(Ne):ネオンサイン(蛍光灯)
  • アルゴン(Ar):溶接時の不活性ガス、大気からの遮断
  • ヘリウム(He):気球、冷却材(超低温用途)

どれも「安定で他の物質と反応しない」という特性が生かされています。

まとめ

  • 希ガスは 18 族に属し、最外殻電子が満たされているため非常に安定
  • 化学反応にほとんど関与しないが、まれに化合物を形成する例もある
  • その安定性は、他の元素の反応性や化学結合の理解における重要な基準となる

次回は、化学反応式の基本的な書き方と、その意味について解説します。

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